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ブロック崩し ブロック崩しのページ 畑山畑

キャスという女性は

カラーン、カラコロコロ……コン。

小気味のいい音を立てて、玉が回転盤に吸い込まれた。

「あら?」

ニューベガスにはゴモラという名のカジノがある。
娼婦がいたりマフィアが仕切ってたり内部にきな臭い動きがあったりと、このご時世ではごく一般的な経営方針をとっている。が、そこはどうでもいい。
肝心なのはギャンブルが出来るという事実だ。

「おめでとうございますお客様」
「わー。すごいなキャス、一点賭けで大当たり」
「ええ……ほんとに当たるもんなのね」

相槌だか困惑の声だかをあげている、帽子をかぶった赤毛の女性。
今回の主役はキャスである。本名はローズ・オブ・シャロン・キャシディー。
運び屋につられてカジノに引っ張り込まれた結果、適当に置いたチップが36倍になって帰ってきたのだ。

「ま、これで当分酒代には困らないか」

大勝ちしたといっても、さして喜ぶ様子もなく空になったウイスキー瓶をふる。
キャスはそういう人物だ。冷静で頭も切れるし、銃や火薬の扱いも上手い。このご時世でも生き抜いていけるだけの強さを持っている。
……のだが、不思議と運が悪い。
こういう細かいところでは何故かツイてるようなのだが、肝心なところで不幸が襲い掛かってくるタチらしい。

「不憫な……」
「何か言った?」
「気のせいだよ」

勿論運び屋は即答しておく。
変に同情していたと知られれば、ウイスキー瓶で小突かれてしまう。

「そう?それじゃもう出ましょうか」
「このチップを元手にさらに儲けようという気は」
「無いわよ、ギャンブル狂じゃないんだから」
「それもそうかな」

運び屋のナチュラルな駄目人間発言を切り捨て、キャスは颯爽とカジノ・ゴモラを後にする。

「あ、先に換金……行っちまったよ」

うっかり置き去りにされた運び屋がぼやく。
仕方がないので大量のチップを適当な革袋につめていくと。

「なあお前、さっきのねーちゃんの知り合いだろ?ちょっと紹介してくれねえかな」
「お前とつるむのに飽きたらいい働き口があるって言っといてくれ」
「へへっ、あんないい女とどこで知り合ったんだ?おい」

キャス目当てのギャンブラーどもにやいのやいのと言われ始めた。
運び屋は彼らを一瞥し、

「悪いな、キャスはベガスに居つくつもりはないらしいし私も貴様らと話し込んでる暇はないんだよ」

と、それ以上は関わろうとせず素通りした。
背後から「チッ、やっぱ駄目か」だの「だから言っただろ」だのといった台詞を受けて、運び屋は小さく肩をすくめた。
キャスは気の強い感じの美人だ。本人に聞いたことはないが、こんな調子でろくでもない男によく声を掛けられているのだろう。

「不憫だなぁ」

さしあたって運び屋は、本日二度目の同情のセリフを呟いた。
ただその目線は手元に抱えた大量のチップを数えるように動いており、どこまで本気か伺い知ることはできなかった。

2017年 3月22日