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ブロック崩し ブロック崩しのページ 畑山畑

ドリームキャッチャー

乾いた砂と火薬のにおいが鼻につく。
その日は不快なほどの快晴だった。

射撃姿勢は寝射。銃床を肩の付け根の窪みに固定させ、銃を安定させた。
スコープ越しに人影を視認する。
それは愛する妻の姿であり、瘦せこけた子供の姿であり、あるいは年老いた老人の姿をしていた。
これは夢だ。
覚束ない思考の中、なんとかそれだけは理解できた。
荒く効き目で狙いをつけ、喘ぐように息を吸う。一度吸い込んだ空気を2割ほど吐き出し、呼吸を止めた。
悪夢が収束していく。
この後はいつも決まって引き金を絞、

「ところでブーンさん、アリの卵って煮たら食えるかな?」

今忙しいんだ黙っててくれ。

閉じていた瞼が開く感触。
冷たく乾燥した空気と、微かに漂う生臭い匂い。
サングラス越しの暗い視界に、キャンプファイヤーの炎が映った。
――何故か蟻の卵を抱えた運び屋の姿も。

「あ、起きた?ところでブーンさんに聞きたいんだけど」
「蟻の卵なら茹でれば食えないことはない」
「エスパーかお前」

本気で驚く運び屋は無視して、ブーンは小さく嘆息した。
吐いた息が夜陰に溶ける。
どこまでが夢かは分からないが、最後の結果だけは見ずに済んだ。

「それじゃあこの鍋に水と卵をぶち込んで……岩塩まだあったかなー」

一方運び屋は、ぞんざいな手つきで焚き火に深鍋を設置していく。
ブーンは首を2~3度動かし、悪夢のおかげで凝り固まった筋肉をいくらかほぐした。
どうやら座ったまま寝てしまっていたらしい。

「煮えろー、煮えろー、死に絶えろー♪」

運び屋がまた奇妙なことを口走り始めた。
モハビの砂漠に適当な即興曲が流れていく。

「そのおかしな歌は歌う必要があるのか?」
「ないよ」
「そうか」

悪夢の残滓が否が応でも薄れていく。
しかし薄れていいような記憶でもない。彼は黙って口の端を噛んだ。
鈍い痛みに、緩みかけた口角が戻る。

「煮えろー、煮えろー、茹でくされー♪」
「……」

なにはともあれ、夜は更ける。
蟻の卵はプチプチした歯触りで不味かった。

2017年 3月13日