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ブロック崩し ブロック崩しのページ 畑山畑

団体さんとその後

暖かくも優しい湯気が立ち上る。
大きめの具材がたっぷり入った海鮮シチュー。暖かい色合いをした木の器によそわれている。
その中から目についたホタテを選び、底の深いスプーンですくった。

「ザコ~~……!!」

……なんとなく、途中で動きを止める。
このシチューはただじっくり煮込んだだけのシロモノではない。
そのままではちょっぴり味気ない貝類は、一度しっかり味付けして焼いてから鍋に放り込むといった工夫をしてみたのだ。こうするとひと味違ってあらでりしゃす。
気を取り直して、表面がこんがりと引き締まったホタテを口元へと持っていく。

「ザコ~~!!」

ほんの少しだけとろみがかった白いスープ。まろやかで塩気の混じった匂いが鼻孔をくすぐる。

「あああああ……!」

決して時間に余裕がない訳でもない。
これは夕食。ゆっくりと食事を楽しむべきだ。

「まさか……!まさか本気で……!」

テレビもつけてないのに流れてくる雑音は聞き流す。実に静かな夜である。
色んなことを決然と無視して、スプーンを、そしてシチューを………口に詰め込む!

「ザコ~~~~~!!」
「うぎゃあああああ!!」
「やってしまったザコーー!」
「遅かったザコ……全てが終わったザコ~~~!!」

「……っだぁぁもううるさいお前ら!味に集中できないだろーが!」

びっ!と空になったスプーンで、のたうち回ってる物体たちを指す。よい子はマネしないよーに。
なおもいやいやと頭を振る、緑色の細かいの――ザコソルジャーとかいう奴らは、さも当然の権利を主張するかのように、

「だって有機物を食べるなんておかしいザコ!世の中狂ってるザコ!」
「人間なんだからごはんくらい食べるって!それともあれか、有機物がダメだからって岩塩でもかじってろと!?」
「あ、それならセーフザコ」
「できるかいそんなマネっ!」
「そんな気持ち悪い物体を食べるよりは常識的ザコ!」
「お前らに常識を語られたくないわぁぁっ!!」

とうとう立ち上がって絶叫する。
……が、我に返って座り直し、黙々と残りのシチューをかっこんだ。もう何と言われようが知らんぷり。
そしてたんっ!と空の器を飯台はんだいに押しつけ、さらに小ぶりのパンを2個ほど胃に落とす。

「ごっそさん!」
「はあ……恐怖の時間だったザコ……」
「みてるだけで心臓に悪いザコ」

果たしてこいつらに心臓があるのか。ややこしくなりそうだから黙っとくが。
生まれかけた疑問をぐっと飲み込み、食器やらを流しに運ぶ。落ちついたらあとでまとめて洗おう。
そんなことをやってると、ザコが首をかしげていた。……不覚にもかわいいと思ってしまったのは内緒だ。

「そんなに急いでどうするザコ?」
「急いじゃいないけど、早いとこあんたらを元の世界に戻さなきゃだろ。……このままじゃ落ちついてごはんも食えない」
「それもそうザコね」
「……で。特に期待はしてないけど一応形だけ訊いとくね。帰る方法知ってる?」
「知ってるけど無理ザコ」
「だよねー。……あれ、知ってはいるんだ」

ダメもとで尋ねそびれた質問をしてみると、これは意外な話が出てきた。

「ザクレロゲートさえあれば、どんな次元でもひとっ飛びザコ!」
「ザコたちがここに来たのは、たぶんそのザクレロゲートが出る座標を間違えたからだと思うザコ」
「ざくれろ……その門が原因か。じゃああんたら、そっちの世界と連絡とれそうなもん持ってる?通信機とか」
「ないザコ~。ザコたちが持ってるのはこのくらいザコ」

そしてどこからともなく取り出して、ごとごと床に置き始めたのは斧やら銃やらマイクに爆弾。
なんつー物騒なもん携帯してんだ。

「……一応釘さしとくけどさ、ここで武器とか使ったら怒るから」

相手は悪の組織の戦闘員(勝手に決めつけたが大体あってるだろう)である。常識が通用するなんて淡い期待は抱かない方がいい。
近くに置かれた銃を指差して注意しておいた。
しかしこいつらは異論があるようで、

「でもこれはザコたちには無害ザコよ~」
「?」
「これはバクバグガンっていうものザコ!ここをこうして~」

ちみっこい緑の指がちょいちょいと銃に見えるものをいじる。
そしたら中から虫が一匹飛び出してきた。
虫。ぱっと見た感じでは精巧なオモチャにも見える、緑色の虫型機械。
なぜかこっちに向かってきて、顔の前で一時停止。ぶーーーん……とか唸りつつホバリング。

「…………」

なんとなくヤな予感がしたので、

 べちっ。

「あ」

ひっぱたいて床にたたき落した。
フローリングの上でじたばたもがきまわる様を観察していると………いきなり床が白いなにかに変質した!

「っでえええええ!!?」

そこではじめて悲鳴をあげて、手近な朝刊を手にとり丸めて棒状にし、一撃!

 ずぱんっ!!

クリティカルヒット!奇跡的なダメージを与えた攻撃は、狙い違わず変な虫を沈黙させたが、今度は持ってた新聞紙までもが白く染まる!

「わあ゙ーー!」

とっさに新聞ではなくなりつつある物体をザコに向かって投げつける!

「ザコ~イ!!」

投擲攻撃を額にくらい、仰向けにぶっ倒れたザコその1。もはや虫(?)も完全に活動を停止しており、ひとつの脅威は過ぎ去った。

「お……お前らなぁ……」

ぎぎぎぎぃっ、と首を回してザコ達を見やる。
殺ス気か。
そんな非難を込めてジト目になった。居間全体に白い沈黙がのしかかる。

「……え~~~と………このように、バグバグはありとあらゆる有機物を石にしてしまう、素晴らしい兵器なんですよ!」
「そうザコそうザコ!便利すぎてもう困っちゃうくらいザコ!」
「この調子でザコたちが大活躍すれば、きっとダークアクシズにも帰れるザコ!」
「それでは皆さんその日まで~!」

「「「「「ザコソルジャー、ファイト、オーー!!」」」」」

「誤摩化すなぁあああっ!!」

力いっぱい張り上げた叫びは、ザコたちの歓声に掻き消された。
とりあえずこいつらあとでシメる。そしてまともに教育し直す。
そんな無理そうなことを考えながら、私はザコの脳天にチョップを落とした。落とすしかなかった。

2014年 2月5日