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ブロック崩し ブロック崩しのページ 畑山畑

夢の残骸

もしもフィギュアが動いてくれたら。

そう願う人は多いのだろう。
前日の課題が長引きまくり、徹夜明け→学校→帰宅の眠りたい3段コンボをめた私がそんなことをぼーーーーっと考えてしまったのはただの偶然としか言いようがないが。

「で、その結果がこれってか。非常識さ軒並みうなぎ登りだよ。はいSAN値チェック入ります、ダイスロールどうぞ」
「誰だ貴様は」

首根っこを掴まれてぶら下がりつつこんにちは。
いくら私が同年代の女子と比べてほんの少し身長が控えめだからといって、まさかSDガンダムに猫の子が如く扱われる時代が来るとは。

「だーれと言われてもねえ、部屋でガンプラとか飾ってある棚を眺めてたら棚が急に光って現在に至るユーリさんです」
「ほう……つまりまともに答える気がないと」
「答える答える答えますっ、名前はユーリで職業は学生、みずがめ座A型趣味は映画鑑賞、特技はマッチで城を作ること!天馬ペガサスの国出身!」
「そうか」
「おいおい私はちゃんと答えたよ。腕の刀を構えるな理不尽な人だな」

人じゃなくて武者頑駄無っぽいけど。
そっちの常識にあわせて天馬の国と発言したが違うのか。分岐を間違えた場合私の生存フラグはもれなくへし折られる。

「よーしひとまず落ちつこうぜー、ところでこの状態は地味に首が絞まって苦しいんだけども」
「まずは目的を聞こうか」
「だめだ話が通じねえ」

ところで私は眠いのだが。こちとら徹夜明けだよ首根っこ掴んでるなよ息がしづらい。
ところでどこかで聞いたような声だな。現れた1秒後くらいにはもう捕まってたからロクにこいつの姿を確認できてないよ。

「貴様のような小娘に俺をこんな場所に飛ばす力があるとは思えん。他に誰かいるのだろう」
「いませんて。ここにはたったひとり私だけ!」
「なるほどな……」
「ちょちょちょ、そんなこと言いながら家捜しするのやめてくんない!?ああそこはひっくり返さないで!」

口では納得したよーなこと言いながらあっちこっち荒らしはじめたよ。
パソコンはやめろゴミ箱の裏には何もないよ!待ってそっちは見られちゃ死ねる恥ずかしいあんなものやこんなものが隠してあるから触るんじゃない!!

「はーーーなーーーせーーーぷらいばしーのしんがいだーーーあー。」
「……チッ、確かに気配はないか」

なぜに舌打ち。
うう……それにつけても眠気の強さよ。

「ならば本当に貴様が…………………おい」

何か用かいガンダムさん。
いま上瞼と下瞼が熱いヴェーゼを交わそうとしてるとこなんだから邪魔しないでくれ。

「本日の営業は終了しました~……またのおこしを~~」
「なんだと……おい!ふざけるな小娘!」

もうやだ寝たい。眠いったらない。
首根っこを掴まれて足が床から浮いてるという、世にも寝づらい体勢だが、この際文句を言うのはよそう。

「んーでも……どこかで……」

さっきも少しだけ気になったが、なんだかどこかで聞いたような声だこのひと。
冷静に考えても考えなくても、とてもじゃないが眠りにつける状況じゃあない。それでも意識が薄くなるのはなぜ。

気のせいかもしれないが、私はこいつを知ってるような。

…………どうでもいいか。ねむい。くそねみ。

「――て!…――な――――!!」

なんだか耳元で懐かしくも渋い声が怒鳴ってたよーな気がするが、なんだかとってもどーでもいい。
それじゃあおやすみ、―――ゃん。


翌日の朝。

「お前コブちゃんだろ!!!」
「ぬぐッ!?」

叩き起こされまた尋問を受けそうになったが、私はえらくお腹が空いたのでおにぎりを作ってこの忍者にもさあ食えとふるまっていたところ。
完全に思い出してしまった。

「貴様……最初から気付いていたのか!」
「うわあ……!!」

思わず立ち上がって後ずさる。待ってどうしてなんでこんな。落ち着けまず手に持ってるおにぎりは皿に戻しておこう。
SDガンダムフォースの登場人物、虚武羅丸ノ黒。9つもの城をたった1人で落とした戦歴からついた通り名は城落としの虚武羅丸。
現在は軽装状態で、頭に元気モリモリ!のペイントがあることから時間軸はおそらく最終決戦以降。

「何が目的だ。言え!」
「ない、よ……そんなの」

無い。そう、そうなのだ。
最初の興奮が過ぎ去ると、ゆっくりと身体から力が抜けていき、最後には膝から崩れ落ちる。フローリングの冷たさが心に痛い。
どうして忘れていたのだろう。あんなに大好きだったのに。
思い出すのも恥ずかしいが、一時期真剣に虚武羅丸に想いを寄せていた時期があったりするのだ。
もう頭を抱えるしかない。

「ずっと、忘れてたのか」

いま分かった。あの棚に飾ってあったのは、子供の頃に買った虚武羅丸のアクションフィギュアだ。

「勝手に落ち込むのはいいが、そもそもここは天馬の国なのか」
「ああ……うん。ええとね、たぶんそうで、私がちょっとでも願ったから……はは、放送から何年経ったっけ……?」
「………」

耐えきれずに顔を覆っても、何もない。会えてすごく嬉しいと……もっと思えていたはずだ。昔の私なら。

(とっくの昔にあきらめてたのに。今さら逢えるなんて……あんまりだ)

なにもかもが遅すぎた。どうして想い続けることが出来なかったのか。悔しいのかなんなのか、分からない。自分の心なのに、自分が抱いてた好意なのに。
もう涙も出てくれない。

「全く……小娘の戯言に付き合わされるなどいい迷惑だ」

「……しってる……」

「まずは食って落ちつけ。そんな調子で話されても分からん」

がちゃがちゃこちらに近づいてくる音。
なんだろうか。顔を覆っていた指の隙間から覗いてみると、白いおにぎりとトゲトゲしい指。

「……うん」

また一段と苦しくなった。
差し出されたのは私がさっきまで食べていたおにぎり。
酷い顔になる前に……あるいはもう手遅れかもしれないが、とにかく手を伸ばす。
嬉しいとか46話と逆だとかそもそもなんで泣きそうになってるんだ私とか色々思ったが、とにかく受け取ったおにぎりに食いついた。
口に暖かい白米の味が広がる。塩をきかせてあるので僅かにしょっぱい。

「名前はユーリと言ったか」

時折はさまれる質問に、食べながら全力で頷く。
ごめんねコブちゃん、あと少しだけ待ってくれ。そしてらすぐに立ち直ってみせるから。
どうして逆トリなんてしてきたのかどうして私のところなのか、なにもかもよく分からないけれど。

だたおにぎりが美味しくて、またコブちゃんを大好きになった。
いまは、それしか考えたくないんだ。

2014年 1月12日