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ブロック崩し ブロック崩しのページ 畑山畑

たからもの

あの日のことは、今でもよく覚えている。
病院施設。親戚の友達だとかいうサラリアンの女性。
白い屋内照明を受けて、てらてらと光るサラリアンの卵が、私には宝物に見えた。
これから処分されると聞いて、心の底から惜しいと思った。
だから――

「あらあら。ちょっと見ないうちにすっかり大きくなっちゃって」
「母さん。もう何度も……それこそ100回くらい言ったけど、サラリアンの時間感覚は早いんだ。私にとっては『ちょっと』じゃなかった」

仕事にも慣れて長めの休暇願いを出し、しばらくぶりに帰ってみればこれだ。
他の種族は大体愚鈍に見えるが、彼女は輪をかけてのんびりしすぎている。

「わかってるわかってる。そのうち私の年も追い越しちゃうんでしょう?不思議な感じねえ」
「精神年齢のことを言ってるのなら、その認識で合ってるよ。
 ……生殖契約を結ぶのも、人間に比べると早いはずさ」
「あらあらあら。それは楽しみねぇ」

にこにこ。彼女は顔色一つ変えずに笑っている。
当然だ。母親にとって、子供が誰かと結婚するのは何もおかしいことじゃない。
この人はサラリアンに詳しくないから呑気にしているが――きっと詳しくても呑気にしてただろうな――私の年で生殖契約を結んでいないのは、少々珍しい部類に入る。
さっさといい相手を見つけて契約を結びたいところだが、どうにもうまくいかない。
良さそうな相手の情報を掴んでも、どうしても……

「母さんはいいよね。気楽で」
「いきなりひどいわね。なぁに、遅めの反抗期?」

少しもこたえた様子はない。寧ろどことなく楽しそうだ。
この人は常にこんな調子だ。彼女を動揺させるなんて、きっと一生かけても無理だろう。

「まさか。愛してるよ母さん」
「私もよ。あなたは私の宝物だもの」

かけられた言葉に心臓がはねる。いや違う、気のせい、気のせい。

「あなたが生まれる前から、ずっとね」
「そうか。ありがとう。ええと、土産話が山ほどあるんだ。何から話したものかな…」

大丈夫。休暇の間くらい、このおかしな気分は無視していられる。
それにこういう……あー、現象は、一過性のものだと本で読んだんだ。上手く折り合いがつけられるはずだ。今年こそ。

私達は親子なのだから。

だろう? ……母さん。

2016年 2月26日