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ブロック崩し ブロック崩しのページ 畑山畑

緑々の団体さん

帰路につく。
ただ家に帰るだけ。もう幾度となく繰り返してきた動作だ。
今日はたまたま夕日が綺麗で、あー帰り道日和だなーと自分でもよくわからん感傷に浸ったりしていた。

変わったことといえばそのくらいだったのに。

  がちゃ。

「たっだいま」
「あ、お邪魔してますザコ」
「あ、どーぞごゆっくり」

………………ん?
緑の頭がひとつ、ふたつ、みっつ、たくさん。玄関にみっちり並んでる。
――これは。
私は迷わず息を吸い込み――

「「「「「有機物ザコーーー!!!」」」」」
 「なんだお前らぁあああああっっ!!」

パニック勃発。
ええいこいつらにつられて私まで必要以上に大声出してしまったっ!
とりあえず持ってた鞄を胸にしっかり抱え込んで防御態勢、必要とあらば玄関に立てかけてある傘を武器に!

「逃げるザコ逃げるザコ!」
「ひるむなザコー!人間1人くらいザコたちでもなんとかできるザコ!」
「そんな問題じゃないザコ!近寄りたくないザコ~!」

「いきなり失礼だなおい」

なんなんだこの不思議ロボ生命体は。中に人が入ってる…にしては小さすぎるし。
でも見たことがあるような。確かアニメで……

「えーーと……ガンダム!」
「ザコォ!?」

びしと指差し、口走る。自信満々に言っといてなんだが、びみょーに違うかもしんない。

「ザコたちはザコソルジャーザコよ!?」
「ちがうんですよ、そ~なんですよ!ガンダムフォースの奴らと一緒にしないでほしいんですよ!」
「ザコ……?言われてみればそんな気も……」

可能な限り後退したり、壁との同化を試みてたり、おもちゃにしか見えない斧を抱きかかえてたり、様々な格好でごちゃついてるザコたちとやら。
襲ってくる様子がないのをいいことに、鞄を床に降ろして考え込む。

「そーいえば昔……ガンダムとかマジンガーZとか出てくるゲームでぎたぎたぎたにした覚えが……あるような顔ぶれ……」
「……なんか、怖いこと言ってるザコ」
「ゲーム……?ゲーム……って待っておかしいおかしい完全無欠におかしいよ」
「おかしいのは最初からザコ」
「知ってるわそんなこと。違くてもっとおかしくて!」

まずロボットはこんな流暢に会話しない。喋る度に口がうにょうにょ動いたりしない。やたらと人間臭い細かい動きまで再現できない。不法侵入される覚えもない。ドッキリにしてもここまで凝る必要はないはず。はいそこから導き出される答えは。

私はやおら顔を上げ、適当な方角を―――いや未来を見つめて、

「……よし。全員どこぞの研究機関に売り飛ばそう」

「「「「「待つザコーーーー!!!」」」」」

なぜか悲鳴をあげられた。

「おかしいザコ!この人間絶対おかしいザコ!」
「だいじょーぶっ、運が良ければ死なずにすむ!」
「ちっとも大丈夫に聞こえないザコ!」
「ええい男が細かいことを気にするな!」
「ぜんっぜん細かくないザコよ~~!!」

と、いうのは半分冗談として。

「はいはい、実験材料にされたくなかったら質問に答えてもらおうかあんたら誰。」
「うう……なんだかうまいこと誘導されたような」
「確かここの近所だと工業大学がロボットを解体したがってたような──」
「言うザコーー!!」

素直でよろしい。

「う~ん、でも誰かと聞かれても~」
「ここはやっぱりアレしかないザコ!」

ザコその1(仮)が高々とマイクを掲げる。
なんだか知らんが、しばらく観察してみよう。


ちゃかちゃっちゃっちゃっちゃーん!

「「「ザコザコアワー!」」」

「えーみなさん、こんにちはー!」
「おいっす」
「どーも」
「本日のミーティングは~」

「「「ザコたちは一体なんなのか~~~!!」」」
「ヒューヒュー!」「いえー!」「ザコザコザコ~!」

「です!」

「…………おう。」

3人を筆頭に突然ミーティングとやらが始まったのはいいとして、最初の効果音がどこから聞こえてきたのか気になる。誰も楽器は持ってないはずだが…。

「さてさて、基本的なことを聞かれたザコね」
「ちがうんですよそ~なんですよ!ザコたちはダークアクシズの一員なんですよ!」

「だーくあくしずぅ?」

なんだその悪の組織感バリバリな分かりやすいネーミング。

「スクリーンプリーズザコ!」
「あらよっと」

がつんとマイクで仲間のザコの頭をどつくと、目から映像が飛び出し壁に映し出された。
禍々しい澱んだ世界と、でっかい戦艦みたいなのがある。

「あそこに見えるのが、我らが拠点マグナムサイ!」
「ザコたちは3人のリーダーとともに、異次元侵攻を行っているのです!」
「そのリーダーというのが、この方たち!」

映像が切り替わって3人の……これまた悪役大爆発みたいな奴らがいたが、それより。

「――で、そのだーくあくしずが。私の家になんか用でもあったわけ?」

「ちがうんですよそ~なんですよ!そこが一番わからないところなんですよ~!」
「いつもみたいにガンダムフォースと戦って~、いつもみたいに吹っ飛ばされて~、気がついたらザコたちここにいたザコ!」
「まったくもって謎ザコね。有機物はなにか知ってるザコ?」
「ゆっ……有機物て。私はユーリだ」
「ユーリでも有機物でも害虫でもいいザコ。どれも一緒ザコ。それでなにか…」
「そぉぉぉんなふざけたことをぬかしやがるのはこの口かぁああああああああ?」

ぐぎりりりりるぃ。

口らしき部分を片手で引っ掴んで締め上げると、手足をじたばたさせて断末魔じみた悲鳴を上げられる。

「ザコ~~~~~~!!ザコたちが悪かったザコやめるザコユーリって呼ぶから許して~~!」
「はいはい」

あっさり手に込めた力をぬくと、さほどダメージも受けてない様子で頭を2~3度振っていた。
根はいい奴らなんだろうが、いかんせん間違った教育を植え付けられたタイプだ。どーにかなんないかな。
解放して手持ち無沙汰になった片手を軽ーく振りつつ、

「えーと何の話だっけ。」
「この状況についてユーリがなにか知らないかって話だったはずザコ」
「そうそれな。私も知らないよ、それこそこっちが聞きたいくらい、ってやつ」
「ザコたちもそうザコ。心当たりはないザコか?」
「残念ながらなんにも。弱ったなぁ……」

こちらが軽く嘆息すると、つられたのかザコ達全員に暗い空気が漂い始める。

「ザコたちだけでこんなところに来てしまったザコ」
「これから一体どうなるザコ?」
「正直かなり不安ザコ」
「だ~~~っもう悩んだって仕方ないザコ!ザコたちはとにかく行動あるのみ!」
「そうザコ!そうと決まれば明日も~!」

「「「「「ザコソルジャー、ファイト、オーーーー!!!」」」」」


「………さて、具体的には何をどうがんばるんだ」
「それは言わない約束ザコ」

マイクを片付け、他のザコと見分けがつかなくなった3人組に問いかけるも、やっぱりそんな感じの返事が返ってきた。
呆れて思わずジト目になる。

「あんたらやる気あるんかい」
「やる気はばっちり十分ザコ!どうすればいいのかさっぱり見当がつかないだけザコ!」
「そうザコ!ザコたちはがんばってるザコ!」
「あーはいそうだね、しかし実際問題行く場所がないってのは困るよなぁ……」

私の家もそう広くないし、こいつら全員をおけるかと聞かれたら答えは怪しいところだ。そもそも多すぎて何人かすらまだ数えられてない。
そんなことを考えてると、ザコのうちの1人がおずおずと歩み寄る。

「え~と……ちょっとの間だけでもここにおいてほしいザコ!あとはザコたちでなんとかするザコ!」
「そうザコ!数にものを言わせて、絶対にダークアクシズへ帰ってみせるザコ~!」
「人海戦術かよ。ああもう……わーったよここにいるといいよ、その代わり狭くても文句は言うな」

我ながらぞんざいに言い捨てると、とたんに万歳三唱でもする勢いで喜び始めた。

「やったザコ~!」
「マグナムサイ帰還への第一歩ザコ。これでどうにかなるザコね!」
「ちがうんですよ、そ~なんですよ!まだなにもしてないのに油断は禁物なんですよ~!」

「…………」

ほっといたらいつまでも騒いでそうだ。
……私が協力しなかったら、こいつらいつまでも帰れないんじゃないか。あながち否定できない想像をしてしまった。
まぁ、とにかく。この騒がしいザコソルジャー御一行が元いた世界に帰るまで、退屈することだけはなさそうだった。

2014年 1月25日