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ブロック崩し ブロック崩しのページ 畑山畑

我が家の受難

突然だが私は冷静だ。
そっりゃあもう冷静だ。これ以上なく冷静沈着。クールだクール。冷凍庫もびっくりな冷徹っぷりを誇る。ほんとだぞ。

しかしこの状況はだな。

「だ!だから俺は気がついたらここに来ていてだなぁ!」
「黙れ不審者!つべこべぬかして私の次世代電動ガンの洗礼を受けるか今すぐ退去するか特別に選ばせてやろうさあどうする!」

どうしてこうなった。

……落ち着いて状況を整理しよう。
まず私はいつもの通りに学校から帰ってきたはずだ。
家族はまだ帰ってきてなかったから無言で部屋の扉を無造作に開けたはずだ。

そしたらなんかロボがいた。

「ここはネオトピアではないのか!?どうしてお主のような女子が銃など持ってる!」
「どこだよネオトピアって!ガンダムみたいな顔しやがって!エアガンなめんな!」
「なんの話だ!?いいから落ち着け!」

部屋の入り口付近に飾っていたエアガンをしっかり構え、ガンダム風なロボ(?)に向けたのは我ながら見事な判断といえる。
サバゲー好きな親戚からもらったお下がりの銃がこんなところで役に立つとは。

「刀とか持ってる奴に落ち着けなんて言われても困る、油断した瞬間に後ろからグサッされたらさらに困る!」
「誰がそんな卑怯な真似をするか!銃を降ろせ、それではろくに話も出来んだろうが!」
「……ちっ」

何故だろう、この赤いのにまともなことを言われると、自分が酷く落ち着きのない非常識な人間に思えてくる。

「まあ、あれだ、いきなり人の私室に現れた俺も悪いのだろう。だがいきなりこれは――」

なにやらうだうだ言ってるが無視だ無視。

「オーケイ分かった、とりあえずコスプレかゆるキャラか本物かはっきりしようぜ」
「すまん、さっぱり分からん」
「そんなこと言って誤摩化そ……嘘じゃない……みたいだな、その目とかまるっきり生き物だし……」

こすぷれとはなんだ?食い物か?とお決まりのセリフを言ってくる赤武者に、少しだけ目眩を覚えたのは気のせいだと信じたい。
何の因果か知らないが、こうなっても自己紹介くらいは必要だろう。お互いの名前と職業を確認し合った。
爆熱丸とかいう生物(たぶん)は、妙にこういった超常現象に慣れてそうな様子である。超どうでもいいけど。

「しかしだな」
「なに。他になんかある?」

武者だのガンダムだの乱世だの、ネオトピアだのえすでぃーじーだのの単語で脳ミソは飽和状態だ。
これ以上は覚えられないから明日にしろ、という意向を伝えようとするより先に、奴の口が赤く光る。

「突然ですまんが、腹が減った」

…………はい?


神でも悪魔でもイワシの頭でも何でもいい。
この状況を司る存在がいるのなら、声を大にしてもう一度問いたい。

どうしてこうなった。

「おおおお……!!」
「あーあ……かーちゃんに怒られるかな……」

お正月用の大皿に山と積まれたおにぎりを見やる。
原因は爆熱丸のヤローである。腹が減ったんなら冷凍食品でもチンすりゃいいのに、どうしてもおにぎりがいいと言いはったのだこの武者は。
まあ少しくらいならいいかと思って握り始めた私だが、うっかりノってしまったのが悪かった。

炊飯器一台分の白米は、全ておにぎりと化してしまった。

「恩に着るぞ!腹が減ってどうしようかと思っていたのだ!」
「あぁはいはい、しっかり味わって食えよー」

色んなものを投げ出したい心境だ。とりあえず後でまた米炊くか。
現実を受け入れよう、変な赤い人間外がおにぎりの山に飛びついてる、これが事実。
とにかく熱血ガンダムは、こちらに背を向けてさっそく1つ目にかぶりついた。どうやって食ってるのかなんて聞かないぞ。なんか怖いし。

「んむ!むぐ……んんっっ!!?」
「……なんだよ」

食うなり驚く自称武者。一瞬こいつの目がやたらと大きくなった気がしたが……気のせいだな。うん。
武者はぐりっ!!とこっちを振り返り、全身から驚愕のオーラを発する。
口におべんと付いてるぞ。

「お主……いや、ユーリ!本当は心優しき女子なのだな!」
「――ぇあ?」

びっくりして変な声が出た。
ナニイッテンダコイツバカジャネーノ。
私の微妙すぎるマナザシにも負けず、きらっきらした瞳が真っすぐ向かってくる。

「このおにぎりには作った者の優しさがある!口のなかでほどける丁度よい固さといい絶妙な塩の加減といい、むぐ!ん!これはオカカだな!はっはっは、ンー!こっちは梅か!うまい、うまいぞー!」

………………

「おおっ、これは野沢菜だな!この歯ごたえがなんとも、むぐっ!んまい!この塩は他と違うな!?米と相まって、こう、んーー!!うまい!」

…………………

ええと。
なんだこいつは。
恥ずかしい。

……どうしよう、なんだか知らないが恥ずかしい。いたたまれない……照れる?これ照れも混じってる?
足が勝手に飯台から2~3歩後退していく。どうした足よ後ずさるな。

「んまい!いやあー、人は見かけによらないというが、ユーリは特にそれだな!」
「お……前はなぁ……」

続いて振り向きざまの輝くような笑顔をくらう。
くっそ、何だよ何だと言うんだ!正面切って褒めるんじゃない!
こんな奴にどう対応しろってんだ、いや待て、1つだけ方法はある!今すぐこいつを現世から抹消させれば良し!!

半分本気で決定付け、爆熱丸とかいうこの馬鹿を、ヤケになって睨みつける!

「とっとと戦国に帰れー!!」
「おかわり!!」

2013年 11月29日