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ブロック崩し ブロック崩しのページ 畑山畑

10年あなたを待っていた

異世界から来たユーリという彼女のことを、シュウトは少し変わった人だと思っていた。
それを言うなら爆熱丸やゼロもめいっぱい異文化全開なのだが、それとはまた違う方向で少し変わっている人だと思っていた。
……しかしその認識は間違っていた。

ものすごく変わった人だったのだ。



「離せ小娘が!」

振り払おうと力を入れる。
――が、どうしたことか、いかにも弱々しい白魚の指はガンダミウム製の腕をしっかと掴んだまま離れない。
虚武羅丸の瞳に驚愕が浮かぶ。

これはS.D.G.基地を落とそうと忍者が暗躍する話。ただし1人の人物が関わったおかげで、異なる流れが生まれていた。

「ふっ……ふふふふふ。イヤに決まってるでしょーが虚武羅丸くん。」

対するユーリは凄絶な笑みを振り撒いた。指先に力を入れ続ける。
本来ならば、人間の身体は武者頑駄無に抵抗できるようにできていない。その証拠に彼女もまた、指先の関節が軋んで嫌な音を立てている。
そうまでさせているのは、力ではなく異様な執念。

「フン……そんなに城を落とさせたくないのなら、先に貴様が落ちてみるか」
「城かあ。基地を城って言っちゃうのも武者ガンダムらしいとこなのかなぁふむふむ」

人の話を聞いてるようで聞いていない。

「ユーリさん!逃げて!そいつに近づいちゃダメだ!」

シュウトがボールの中から叫ぶと、ふっと表情を和らげる。どこか遠くを眺めるような眼差しで呟いた。

「……それは……もう遅いんだよね」
「その通り、もう終わりだ。貴様も小僧もろとも…落ちろ」

言われた彼女がどうしたかというと。それはそれは嬉しげににっこりと微笑んだ。
さらにその満面の笑みとは裏腹に凄まじい力でがっしと虚武羅丸の掌を包み込み、

「ここで逢ったが10年目」

そのまま顔を近づける。

「さあ、返してもらおうか……!!」
「フン、返すだと…?俺は貴様など知らん」
「……っは………あははは。そうだよねえ、でも返してもらいたいものがあるんだよ聞いてくれる?」

と、ここで一旦言葉を切って手を離し、ゆらりと一歩後ろに下がる。
こわばった右手を胸の前まで持っていき、ぐっと拳を握りしめる。

「私のここ……!!」

 どがっっ――!

どこからともなくやってきたキャプテンが、虚武羅丸を吹っ飛ばした。

「キャプテン!目覚めたんだね!」
「貴様……動けたのか!」

「…………」

最後の1文字はだいぶ小声になっていた。
いちばん近くにいるはずのシュウトにも全く聞き取れないほどに。

「ネオトピアへの侵攻に対して、こちらは武装火器の使用を認められている。侵略行為を停止し、速やかに撤収せよ!」
「フンッ!病み上がりがーッ!」

「…………」

自然と体育座りになる。

「……いいもん……まだ待てるもん…………」

続いてじめじめと言い捨てた、本人にすら聞こえない音量の独り言は、空気に淋しく溶けて消えた。

「キャプテン!頑張れー!」
「……がんばー。」

どれほど待つことになるのやら。
少なくとも、当分先であることは間違いない。

2014年 1月13日