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ブロック崩し ブロック崩しのページ 畑山畑

ゾンビ祭りだわっしょいしょい

「この奥ね」

そう言って、リナがやたら古めかしい装いの分厚い扉に手をかける。

ここはほどよく人里から離れていて、
ほどよく薄暗くてほどよくじめじめしてる悪の魔導士のアジト。

私こと瑞穂を含めた正義の仲良し五人組(笑)は、
ここに居座っている魔導士を退治して欲しいという依頼を近所の金持ちから請け、この地までやってきたのだ。

リナは依頼の報酬&お宝目当てで、
ガウリイはリナが行くから、
アメリアは悪人=成敗、
ゼルガディスはここの魔導士は合成獣キメラについての研究もしていると聞いたから。

ちなみに私は面白そうだから、である。

 ぎぎぃぃい……。

それっぽい音なんかたてながらゆっくりと開く扉。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。

初めてのアジト荒らしに胸躍らせ、目の前に広がる薄闇に目をこらす。

「油断しちゃだめよ。なにが出てきても驚かないこと。いーわね」
「はーい」

リナのありがたいアドバイスを受け、
はやる心を抑えつつ、いざ行かんお宝探しへっ。

――その時の私は知らなかったのだ。
まさかあんな、世にも恐ろしい出来事が扉の先で待ち受けているとは……。


それは、部屋荒らしを始めて割とすぐのことだった。
近くでがさごそやってたガウリイが突然、

「なあ瑞穂、これなんだと思う?」

 ぽちっ。

「ん?どれどr……ちょ、待て。今『ぽちっ』って音が聞こえたよーな……」
「そりゃあ押したからな。で、なんだと思う? このスイッチ」
「………………」

私の中に存在する全ツッコミ器官(なんじゃそら)が激しく活動を始める。
それによって導きだされた、この場に最もふさわしいと思われるツッコミを解き放つ。

「押すんじゃねぇぇえっっ!」

 どびすっ!!

渾身の力を込めたチョップが、ガウリイの脳天を直撃した。

「おわっ!?なにす……」

ガウリイが言い終えるより早く、周囲の壁が音を立てて動き出す!

「何だ!?」
「……すいません、臨戦態勢お願いしま~す」

ゼルガディスのシリアスな問いに答える私の声のなんと情けないこと。

「瑞穂さん、いったい何したんですか?」
「まあ気にすんなって、そんな時もあるさ!」
「やったのはあんただろっ!……罠が来ると思うから気をつけてねー」

アメリアとガウリイの相手をしながら、
私もいちおうポケットの中のナイフやらまきびしやらに手をかける。

そうやって身構えていると、動いた壁の向こう側から人影がぞろぞろと這い出てきた。
それもかなりの大所帯。

「うぐおぁあぁああ……」
「ぐいぅうううぅう……」
「こおぉぉぉおおお……」

「………………」

世にも奇妙なうめき声。
鼻につきまくる異臭。
そして……そしてなにより……このびじゅあるは…………

「へええ……このあたしの相手にしちゃあずいぶんと貧相じゃ」
塵化滅アッシャー・ディストーーーっっ!!」

 ぞんっっ!!

自信満々なリナのセリフを遮って、力の限り呪文を叩き込む。

「ちょっとー、人のセリフを」
破砕鞭バルス・ロッド!!」

 びしげしばしいっ!!

「あのね」
「瑞穂 オブ カタストロフ!!」

 どっかぁぁああぁん!!!

呪文の次は
破局的大災害を意味する訳の分からん必殺技を叫びつつ、
ゾンビ共に向かって翔風界レイ・ウイングの体当たりをぶちかます。

……そう、ゾンビ共。
壁の向こうからぞろぞろ湧いて出たのは、なんとゾンビの群れだったりするのだ。

自慢じゃないが、生まれてこのかた一度も生身のゾンビを見たことのない私である。
予想もしてない所にいきなりそのゾンビの団体さんが現れたらびっくりするに決まってる。
コワいし。

……怖がり方が乱暴だというツッコミなんか聞こえないよ。

「こっち来んな。 来たら消す」

「……ま、いっか。そんじゃあたしも、火炎球ファイアー・ボール!」

 ぼぼぉぉぉんっ!

「こっちはまかせてください!烈閃槍エルメキア・ランス!」

 ドッ!

「おりゃあっ!!」

 ざくざくっ!    …べちゃ。

「気は進まんが……青魔烈弾波ブラム・ブレイザー!」

 ぎぃぃぃいん!!

それぞれ思い思いの闘い方でアンデッドの群れを叩きのめす。
不謹慎かもしれないが、にぎやかで楽しい。

「えーっと…!
永久と無限をたゆたいし 全ての心の源よ
我が手に集いて閃光となり 深淵なる闇を打ち払え!
螺光衝霊弾フェルザレードっ!」

 ぎゅぃぁあんっ!!

遅ればせながら私もまともな形で参戦させてもらう。

しばらくそんな感じの戦いが続き、
そろそろ飽きて来たのは私だけでも数十体目のゾンビを葬り去った時だった。


「ったくもう!これじゃきりがないわよ!」
「こっちもどんどん来てますー!」

さっきからわらわらわらわら生えてくるゾンビの皆さん。
いい加減に……こっちくるのやめてくんないかなぁ~……。

「あーもー……これでゾンビがトラウマになったりしたらどーしよ」

当然のことながら、
最初に戦いはじめた地点から一歩も動いていない、なんてことはない。
だいぶ奥に進んだし、もうそろそろラスボス(魔導士)のところにたどり着いてもおかしくないはずなのだが……。

「あっちね!」

とーとつに声を張り上げ、元気よく奥へと走り出すリナ。
どうやら突破口を見つけたらしい。

「リナ、待ってくれ!これなんだ?」

 ぽちっ。

――――そう言って、止めるヒマもなく何かのスイッチを押してしまったガウリイ。

「「押すなぁぁぁあああああっっ!!」」

  ずごげべしぃぃぃいいんっっ!!

声すらハモらせた私とリナの飛び蹴りが、全く同時にガウリイの頭にクリーンヒットする。

 ごごごごご………

しかし、ここでいくらガウリイをしばいても意味はない。
お約束通り壁が動き、壁の向こう側に不気味な気配が生まれる。

「ぅぬらぁぁぁああぁ………」

出てきたのは、やっぱりゾンビの団体さんだった。

「あーーもーー次から次から!!ムシしていくわよ!」

言うなりこちらの返事も聞かずにさっさと走り出すリナ。
この世界のゾンビは映画と違って走ったり噛み付いたりゾンビがうつったりしないので、
ただ走るだけでも引き離すのはたやすい。

後ろから聞こえるうめき声に背中をぞわぞわさせながら、リナの後について必死に走る。

振動弾ダム・ブラス!」

 どごがぁぁああん!!

「さー観念してもらいましょうか!大人しくあたしにお宝を差し出すならよし!さもないと……」
「人ん家にずかずか入りこんで散々荒しまわったあげくそれか!!ちょぉっっとゾンビで強盗とかしたからって……!」

ぶっこわれた扉の向こうにいたのは、なんだか根性のなさそうな魔導士風のにーちゃん。
リナに文句をつけるなんて命知らずなことをしている。

「ふ~~ん……するってぇとなに、このあたしに逆らおうとでも?」

魔法でも投げつけるつもりなのか、人差し指をかかげて魔導士にすごむリナ。

「わ……!私を殺せばこの屋敷のゾンビ達はすべて解放されてお前達を襲いにくるぞ!それでもいいと言うのなら…!」
「ほい。影縛りシャドウ・スナップ

 たすっ。

相手の影にナイフを投げ、いともあっさり魔導士にーちゃんの動きを封じる。

「で?ほかに言いたいことはある?」

リナは余裕の表情で、ゆっくり魔導士に歩み寄っていった。

そのスキに私は机の中を覗き、
大事そうにしてある羊皮紙を見つけては片っ端から引っ掴み、
ばさばさとコートのポケットの中に放り込む。

「ちょっと待てぇぇえっ!!お前っ……!私の研究結果をどーするつもりだぁっ!!」
合成獣キメラに関係あるものならゼルガディスに渡す。それ以外は……
てきとーに肥だめにでも沈めようか」

動けないなりに私の行動を察知した魔導士さんの問いには、とことんそっけない返事を返しとく。

「やめろぉぉおっっ!!それだけはぁぁああぁっ!!」

泣きそーになって懇願なんかしたりする。
根性のないお人だ。


「正しき道を踏み外し、外道の研究に走った愚かな魔導士よ!
あなたの心にわずかでも正義の灯火が宿っているのなら、今からでも遅くはないわ!
犯した罪をつぐない、わたしと共に正義の道を……!」
「くっ!いでよ、合成獣キメラ達!」

何の前触れもなくいきなり語りだしたアメリアのセリフを遮り、追いつめられた様子で叫ぶにーちゃん。

 がこぉぉぉぉん………

なんとかの一つ覚えで、またしても部屋の壁が動き出す。

これで出てくるのがゾンビだったりしたら笑うしかないのだが、
わざわざ名前を呼んだところからすると、今度はキメラがでてくるらしい。

「ぐごぉぉぅぁぁあ……」
「ふぐるぅぅうぅう……」
「うがぁぁぉあぁぁ……」

「ゾンビじゃねーか」

ほとんど無意識で、口をついてでたのはその一言。

「ゾンビね」
「ゾンビだな~」
「ゾンビですね」
「ゾンビか……」

他のみんなも同じらしく、ゾンビゾンビと言っている。

「ははははは!こいつらをただのゾンビと思うなよ!こうなったからにはもう私にも止められな…!」
火炎球ファイアー・ボール

 ばごぉぉぉん!

問答無用で攻撃魔法を叩き込むリナ。
黒こげになってしまったにーちゃんの姿にもののあはれを感じる。

「まあゾンビだし……さっさと焼き払って強盗の続きでもしよっか」
「そーね。あたしとしても、いつまでもこんなやつらの相手なんかしたくないし」

我ながら冷酷というかあっさりした提案に同意するリナさん。

「ぐおぉぅ………」

そんなことをやっていると
ゾンビのうちの一体がこちらに気づき、よーいドンの合図(そんなものはないが)で走り出す!

 どだだだだだだだ!!

…………走り出す?

「うわわわわわわっ!?」

予想外の攻撃に思わず逃げ出すリナ=インバース。

「でぇっ!!」

すかさずガウリイが不気味なゾンビをぶった斬る!

……あんまり現実を直視したくないんだけど、どうやらこのゾンビさん達、走るらしい。
――待てよ、するとこいつら……!?

ふと、不吉な予感が体を駆け抜け、何とも言えない不安が私を襲う。

「ここは逃げたほうがいいっ!」

言うのと同時に、たまたま近くにいたアメリアを引っ掴んでもと来た道を引き返す。

「で、でもっ!敵に背を向けるなんて!」

いかにもアメリアらしいセリフで私の決意を鈍らせる。
だが、ここでもしも私が想像していた通りのことが起こってしまったら……。

「私の予感が当たってたら……!」

アメリアを背中にかばう形でゾンビ達と対峙し、ある呪文を唱え始める。
そして完成させた魔法を目の前の空間に解き放つ!

白翼翔フェリアス・ブリード!」

 ぽんっ。   ばさばさ……。


「ハト…?」
「いけっ ポッポ(仮)!たいあたり!」

アメリアの素朴な疑問にはあえて答えず、ポ◯モンよろしく出てきたハトに命令を下す。

  かぷっ。

ゾンビのかみつく!
ポッポに66のダメージ!

「って食べられてるじゃないのよ!」

すかさず飛んできたリナのスルドいツッコミ。
しかしここまでは予想通りの展開だったりするのだ。
来たるべき『お約束』に備えて呪文の詠唱にはいる。

「ボーーーーー!!」

もはやハトではない鳴き声をあげながら、ポッポがこちらに突進してくる。
その瞳(見づらいけど)に宿るのは、間違いなく狂気の色。

氷の矢フリーズ・アローっ!」

 きぃぃぃん!  ごとっ、がちゃん。

呪文を正面からくらい、氷づけの状態で床に墜落し、真っ二つに割れてしまったハト。

……なんか悪いことしたな。
ごめんよポッポ、お前の犠牲は無駄にはしないっ。

「やっぱり…!こいつらに噛み付かれたらゾンビがうつるっ!」

予想していたとはいえ
ゾンビ映画そのままの設定が目の前に現れ、さすがに体をこわばらせる私。

「なにぃぃいっ!?」

走り寄ってくるゾンビを斬りながら驚くなんて器用なマネをしてるのはガウリイ。

「どうやらそうらしいな。だとしたら、少々厄介な相手だ……!」

攻撃の手を休めずに弱音を吐くゼルガディス。
断っておくが、ゼルが言ったことは決して大げさな表現ではない。

現にこのゾンビは、斬られてもなお上半身とか下半身だけで突っかかってくるし
切り落とされた指の一本でさえ
どーやってるのかは知らないが、ぴょこぴょこ歩いてリナの服によじ登ろうと……
……あ、消し炭にされた。

とにかくそんな感じなので、ばか正直に相手をしてたら年が明けてしまう。

大技で一気に勝負を決めることが出来たらいいのだが、今いる場所はでっかいアジトの中。
あんまり派手な技を使うと、生き埋めになった後ゾンビの仲間入りに……。
……それはヤだな。

「うつるってことは……!振動弾ダム・ブラス!」

 ごがらぁぁあんっ!

何かをひらめいた様子のリナが
呪文でゾンビ達の上の天井に穴をあける。
あいた穴から見えるのは、灰色のくもり空。

「し……しまったぁあっ!
吸血鬼ヴァンパイアかなにかとの合成獣キメラなら
お日さま浴びたら弱ると思ったのに!」
「今日は一日くもり空が広がり、例年より肌寒い天気になるでしょう。寒さ対策をしっかり……」
「ンなこと言ってないで逃げるわよっ!」

自動的に口から漏れたお天気おねーさんのマネを華麗にスルーし、ダッシュでこの場から走り去るリナ。
あわてて残された私達もあとについて走る。

「瑞穂!
あんたミョーにこーゆーことに詳しそうな口ぶりだったけどっ、
こんな時の対処方法とかあんたの世界にはあったわけ!?」

走りながら後ろ――つまりこっちを向いて話しかけてくるリナ。

「そーだね、私が見た映画じゃ 取りあえず仲間の誰かがゾンビ化しなきゃ話が進まない、みたいな鉄則があったけど……」

対する私は、身もふたもない事実を深く考えもせずに言い放つ。

「囮作戦ってやつね……。だったらあたし達がとるべき手段はひとつ!」

……悪い予感しかしないセリフなんだけど。それ。

「ゼルには悪いけど、みんなのためよ!ギセイになってね(はぁと)」

 げしっ!

ぶりっこポーズからの蹴り飛ばしなんてミラクルな真似をし、リナはゼルガディスを生け贄にした。

「なぁぁああ!!?」

予想だにしていなかったところで蹴飛ばされ、まともにバランスを崩すゼル。
そこを逃さずゾンビ達は人海戦術で一気にゼルガディスを押さえ込み、腕やら足やら頭やらにかぶりつく!

「ちょぉ!ゼルガディスが噛み付かれてんだけどっ!?」
「だぁーいじょぶじょぶ、ゾンビなんかじゃどーせ歯が立たないわよっ、文字通りね」

「く…!!おいリナ!後で覚えてろよ!」

なるほど言われてみれば。
ゼルガディスの皮膚の強度をもってすれば、ゾンビの噛み付き攻撃なんか通用しないだろう。
文句も言ってるし、ちゃんと自我があるようだ。

「よーーしっ、このスキに!アメリア!浄化呪文を!」

「はいっ!
……この世ならざるものども 歪みし哀れなるものよ
浄化の光もて 世界と世界を結ぶ道 歩みて永久に帰りゆけ……。

浄化炎メギド・フレア!」

アメリアの『力ある言葉』と共に、柔らかな光の波がひろがった。
その光に包まれた瞬間、ゾンビたちの動きが止まり、ただの塵へと還…………るやつもいる。

「そんなっ!?」

動揺するアメリア。
それもそうだろう、力一杯放った術が
いくら合成獣とはいえ、ゾンビみたいな低級のアンデッドを消滅させるに至ってないのだから。

3分の1くらいは塵になったが
残りのやつはどろどろに溶けただけで、なおも活動を続けている。

「ゼルガディスっ!」

もうここまで来ると見ていられない。
あんまりと言えばあんまりなグロテスク映像のまっただ中に置かれたゼルが流石に可哀相になってきたので
とっさに手を差し伸べる。

「リナ!
こーなったら広範囲無差別殺戮用の超強力暗黒魔法とかそんな感じの呪文で
このアジトごとぶっ壊すしかないと思うよ!
ゾンビ映画でもそんな結末のやつがあった……かな!?」

ゾンビ映画なんかあんまり見たことはないのだが、取りあえず適当に自分でもよく分からないことを口走る。

「どうやら、そーするしかなさそうね…!翔風界レイ・ウイング!」

呪文を唱え、さっき魔術であけた穴から飛び出るリナ。

「じゃあ私らも行くかっ」

ゾンビ汁にまみれたゼルガディスの顔を自分のコートで拭いて、翔風界レイ・ウイングを発動させるべく精神を集中する。

「ああ……悪いな」
「おとっつあん、それは言わない約束よ。」
「おとっつあん……?」

照れ隠しにこぼれたセリフにまともにとりあうゼル。

「あ、気にしなくていーから。」

分かる人にしか分からないネタを全く相手にしてくれないのも淋しいが、真面目に相手をしてくれるのも居心地が悪い。

そんなどーでもいい矛盾を抱え、天井の穴から飛び立っていったのだった。

「おい!ちょっと待ってくれーー!」

……訂正。飛び立つ途中で引き返し、
ガウリイの首根っこを掴んでから改めて飛び立ったのだった。


「1番、リナ=インバース!竜破斬ドラグ・スレイブいきまーす!」

全員がアジトから脱出したところで、運動会の選手宣誓のように元気よく宣言するリナ。

「いよっ待ってましたー」

 ぱちぱちぱち。

マイペースに拍手なんかする私。

「黄昏よりも暗き存在 血の流れよりも紅き存在
刻の流れに埋もれし 偉大なる汝の名において
我ここに闇に誓わん!
我らが前に立ち塞がりし 全ての愚かなる者に
我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを!」

笑みすら浮かべて呪文を紡ぐ。
……こーゆーことやってるから『ドラまた』だの『大魔王の食べ残し』だの言われるんだろーなー……。

そんな呑気な心境と反比例するかのように、強力無比な赤い閃光がリナの手から放たれる!

竜破斬ドラグ・スレイブ!!」

 ごどぅぉぉん!!

………ゾンビ映画の監督かなにかが見たらずっこけるような結末を向かえ、この事件は幕をおろした。

「……こーして、世界に平和が戻りましたとさ。めでたしめでたし」

そこに映画のエンドロールでも流れているかのように、何もない虚空を見つめる私。

「俺はちっともめでたくないんだが……」

やおら、納得できない様子でぼそりっ、とつぶやいたのはゼルガディス。

だいぶマシにはなったが、なおも服からはゾンビ汁がしたたり………なんともおいたわしい姿になってしまっている。

「………ありゃ…………ほい、パス。」

反射的に魔導士のアジトから頂戴した研究資料かなにかを手渡す。

「なんかの役にたったらいーねっ。」
「……そうだな」

ゼルのつぶやきを聞き届けた後は、さっきのリナの呪文で出来たクレーターなんかを見つめてのんびりする。
……あんまりこの人と喋ってると、照れるというかなんというか……。
1番好きなキャラだし。

「さーて!そいじゃ行きましょうか!」

かけ声と共になぜか走り出すリナ。
その元気はどこから出てくるんだ。

「リナさーん!待ってくださーーい!」

アメリアも負けじと追いかける。
それにつられる様に、ガウリイやゼルもついていく。

「……ひとまずはっぴーえんど、ってことでいーのかな」
「ほら、瑞穂さん!置いてっちゃいますよ!」

3次元にいた時のクセで、ついつい傍観者気味になってしまうが、アメリアの呼びかけにふと我に返る。

「あ、うん!」

やっぱり、異世界ってのは楽しいな。
時々死にそうになるけどっ。

シャレにならないことを明るく考えながら、私も皆の後に続くのだった。

じ・えんどっ。

2011年 12月15日