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ブロック崩し ブロック崩しのページ 畑山畑

Memory of blue rose

「人がいらっしゃるのですか?」

剣と魔法と、騎士の国ラクロア。
ここは王城からほど遠く、人々の喧騒から離れた田舎である。
そこへ旅人風のガンダムが訪れていた。

「え?」

村娘風の少女が振り返る。
周りに遮蔽物もない田舎道で何を言ってるのか――そう思っているようで、いささか怪訝な顔をしている。

「まあ、ここにはわたししか居ないけど。なにか用?」
「ブリティス王国はどちらでしょう?」
「それならこのあぜ道を真っすぐ進んで、山を3つくらい超えた先に……ちょっと、一人で大丈夫?あんた目が見えてないみたいだし」

言ってる途中で気が付いたが、このガンダムは瞳に光が入っていない。
さらに怪我でもしているのか、おぼつかない足どりをなんとか杖で支えているだけの状態だ。

「いえ、私は……」

言われた彼は居心地悪そうに口ごもる。
何かを思い出しているのか――あるいは思い出せないのか。
ふと、何かに気づいて顔をそらした。

「……あ……薔薇の香り……?」
「近くに野生のバラが生えてるからね」

畑の片隅には野ばらの群生地がある。
茨だらけで花も小さく、お世辞にも見栄えは良くないが、その香りは強い存在感を持つ。

「あまり近づかないほうがいいよ、ハチが……え、どうしたの!?」

少女が彼の顔を見て狼狽する。
当の本人は、どこか生気の抜けた様子で佇んでいた。

「いえ……。薔薇の香りがしたら、わけもなく悲しくなって……」

MS族の中でも、ガンダム族の表情は人に近いと言われている。
しかし彼女は、目の前の旅人が何を思っているのか分からなかった。

なぜ泣いているのか分からなかった。

……かける言葉が見つからない。
沈黙と、薔薇の香りだけが横たわる。

(盲目に記憶喪失?ダークアクシズの侵攻に巻き込まれたのかな。そのショックで……)

勝手な想像を膨らませるが、そうしたことで何にもならない。

「私はもう行きます。ありがとう」
「あっ……うん。気を付けて」

いつの間にか涙をぬぐっていたガンダムが、足を引きずるように歩いていく。
やがて背中が見えなくなると、少女は空を仰ぎ見た。
意味はない。ただそうしたくなった。

七曜万象に宿りしマナよ。
マナよ。
願わくばあの旅人に、安らかな旅路があらんことを。

2017年 1月29日