1up piercing Many Wide short Blink Big ball Ctrl Loading... BB2021 Click to start Ver 0.0.0.0 Please click to go to the next page. Game over Please click to try again Failed no item Stage 1/1 0% / 0% Stock 0
設定
1倍
※iOS非対応
ON
ON
ON
1倍
1倍

カーソルもしくはタッチしている位置をボールが追いかけます。

ブロック崩し ブロック崩しのページ 畑山畑

氷刃の記憶

伝説の眠る地、辺境の国。
ラクロア王国は私の故郷だ。

(この区域はあらかた終わったから、次は……。あっちよね、確か)

きらびやかな城の中、メイド服で掃除をしてまわる。
こんなことをしているくらいなので、私の職業は勿論メイド。
廊下をきっちり磨き上げ、水晶のような輝きを生み出すのが今の仕事だ。
掃除道具をまとめあげ、移動しようと廊下の角に視線を移す。

(あ、姫様だわ)

急ぎ足で、なおかつ綺麗な姿勢を崩さずに向こう側の廊下を横切っている。ふとこちらと目線があうと、にこり笑って口元に人差し指を当てる。
全てを悟った私も、小さく会釈をすることで応えた。
と、いうことはもうすぐ。

「すまない少し良いか」
「はい、なんでしょう」

思った通り、今度は騎士殿がやって来る。
翡翠色の美しい騎士ガンダム、ディード様。
少しおてんばな姫君に振り回されるのは、いつもならゼロ様の役目だが、時折この方も引っかかることがある。例えば今のように姫の所在を使用人に尋ねる時、

「姫様ですか。先程この廊下を通り過ぎて……精霊の泉へ向かわれたようでしたが」
「助かった。礼を言う」

このように。
何も気付かない素直な御方は、言われるがままに正反対の方向へと飛んで行った。
……敵を相手にする時は別なのだろうが、こういう小さな所で迂闊な方だ。それを口に出すつもりはないけれど。

そういえば英知の園へ行ってから少し様子がおかしい、と言う人もいるようだが、私にはそんな風に見えなかった。
今まで通り、生真面目で不器用な親衛隊の騎士様。

(だってあのディード様だもの。この世の英知を目の当たりにして、ほんの少し変わることはあっても……やっぱりあの方はあの方だから)

美しい鎧を身にまとった、氷刃の騎士。

この方なら大丈夫だと。信じられると。
疑う余地もなく信じ込んでいた日々が、やがて苦しい思い出に変わる時が来るのだが、それはまた別の話。

2014年 7月10日