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ブロック崩し ブロック崩しのページ 畑山畑

こんな毎日が続けばいい

「みずぅ~、みずぅ~、ウォーターだよぉ~~♪」

タイムマシンを起動すると、今日も子孫が歌っていた。

「ンダバダバダバダバダバダバ~~、おみずぅ~、おみずぅ~、レッツゴー、お水!Foo↑Foo↑Hey!イヱア!!О!М!アイ……いたのかご先祖様……」

つい先程スイッチを入れたところなのだが、面白そうなので黙っておく。
それより何をしているのか聞いてみた。

「何って……オリジナルソングだよ……というか、このやりとり前にもしなかったか?」

そうだろうか。
記憶の底をさらってみる。

部屋の真ん中に見慣れぬ機械が鎮座していたあの日。
私は青い防護スーツの人物に出会った。
画面越しの彼(なのだろう。たぶん)は私の子孫らしく、さらに子孫のいる場所は核戦争もろもろにより荒廃した世紀末の未来世界で……うんぬん。
信じがたい事情はさておき、ひどく憔悴しているようだったので慌てて水道水を送り付けた。

「懐かしいな、あの時のことは俺もよく覚えてるよ。だって水だぜ?初めて会ったやつにそんな貴重なものをくれるなんて、ご先祖様はとんでもないお人よしだな」

当時のことを思い出して、子孫はしみじみと頷いている。
なんだか最初の話題とズレているようだが、まあいい。

「いつも感謝してるぜ。……ちょくちょくセクシーな雑誌を送ってくるのは勘弁してほしいけどな」

うん、もっともな要望だ。
でも仕方ない、あの本が一番効率よく現金を回収できるのだから。1回の送付で1000円の黒字は大きい。
次点が歯ブラシ。こっちは700円の黒字になる。
ちなみに料理を送るとだいたい赤字になるのだが、これは子孫には言わないでおこう。余計な心配はかけたくない。

「だがなあ……燃やす以外に役に立たないし」

いいじゃないか焚火。盛大に燃やそう。イモとか焼こう。
あえて気楽にそう言うと、画面の子孫はおかしそうに肩を揺らした。呆れているのかもしれない。

「全く、ご先祖様は気楽だよな」

そりゃあそうだ。子孫のご先祖様なんだから。

人類の生き残りは、子孫以外にもきっといる。

子孫が子供の頃会ったという、新天地を目指して旅する親子連れ。空を飛ぶヘリコプターの音。ミュータントの中には元人間もいるはずだ。
人間たちが今もどこかで生き延びている可能性は0じゃない。

だが私は、それら人類の生き残りと子孫が出会うことよりも、この仕送り生活が続くことを望んでいる。
未来人とのくだらないおしゃべりは、私にとってかけがえのないものになってしまった。
何よりの楽しみであり、心から安らげる時間と言える。

「ところでご先祖様、あの廃墟にあった液体だけどさ、ほんとに飲めるのかい?……え、ポンジュース?ポンジュースってなんだ?」

もしも他の人類と出会ってしまえば、子孫は彼らと行動を共にするだろう。
きっと、タイムマシンは置いて行かれる。

「なるほど、植物から体液を絞るのか。けどさ、なかなか骨が折れるんじゃないか?あいつら容赦なく襲ってくるからな」

いつまでもそこに居てほしい。
飽きるほどに仕送りを続けたい。
変わらない態度で接してほしい。

「お水様に混ぜるだって?さすが、昔の人間は大胆不敵だな……とてもじゃないが真似できないぜ」

ずっとずっと、どちらかが死ぬまで永遠に。
そんな考えはおくびにも出さず、私は子孫と可笑しなやり取りを重ね続けた。

さあ、明日は何を話そうか。

2017年 6月24日